2015年の北陸新幹線開業以来、注目を集め続けている金沢。江戸時代に「加賀百万石」といわれ、豊かな文化を培ってきた北陸の古都には、歴史的建築物と景観がよく保たれています。
私は半年前まで新潟県で暮らしていたので、金沢は比較的近く、度々訪ねていました。金沢城や兼六園、金沢21世紀美術館など、横綱級の観光スポットはもちろん見ごたえがありますが、さらさらと用水が流れる路地裏や静寂に包まれた鈴木大拙館など、あまり観光地化されていない場所も味があり、“穴場”を探して歩き回ったものでした。
もっぱら、こうした町歩きが金沢の楽しみ方だったのですが、春号(91号)の取材を通じて金沢で暮らす「人」に会い、お宅を訪ねたことで見方が変わってきました。金沢のイメージが、建築や町並みなどの「無機質なもの」から、人との思い出を伴った「有機的なもの」になり、親しみが増した気がするのです。
風土社は「ひと・まち・住まい」という言葉を掲げていますが、それらの結びつきを意識すると、対象はぐっと奥行きを増し、生き生きとした表情をみせてくれるようです。3月11日(土)発売の本誌をお読みになった方々にもぜひ、金沢やいろいろなお出かけ先で出会いを楽しんでもらいたいと思います。
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